僕には96歳の母親がいます。 血の気が多い事業家になりたての頃は、神経質な母親のビビリの為に大きなビジネスチャンスを何度も逃してしまいました。 それやこれやで、日本で仕事をするのが嫌になってアメリカに移住し、その間は姉に母の面倒を見てもらってきました。アメリカでは一時期大成功を収めたのですが、挫折して10数年前に日本に戻り、ゼロからタイ料理店クワンチャイを初めて今に至っています。僕の母は夫が40年以上前に早世したこともあり孤独な人生を送ってきましたが、その時期に僕はアメリカに事業の軸を移して母親に寂しい思いをさせてきた訳です。その母親は5年前くらい前までは健脚で天王寺のお墓にも、神戸風月堂での俳句の会にも毎月1回は電車で通っていました。しかし家でコケて骨折してからは車いすになり電車移動は出来なくなりました。 そして3年前にL社が経営するケアハウスにお世話になって現在に至っています。まだオムツの世話にもなっていませんしオツムも、少しボケがあるものの充分働いています。その母の日課は、クワンチャイ各店に置いてある折り紙細工と爪楊枝を入れたショップカードを朝から制作することです。一日30セット~40セットクワンチャイを初めて数年たってから始めたので、今までに制作したショップカードの数は5万セットを超えるでしょう。僕なんか1個作るだけで肩が凝って目が霞んでしまうのに驚きの忍耐力です。10年前にクワンチャイのウエートレスをやりたいと言い出し、引き留めたら勝手に店の前にきて掃除していた母。スタッフが母が外で箒を持ってチョロチョロしていたら仕事が手につかないので何とかしてくださいと懇願してきたものだから、知恵を巡らしてショップカードの制作を頼む様にした訳ですが、息子の為とはいえ本当に有り難いことです。ケアハウスに居る他のお年寄りは目標を失いボーとされている方が多い中で、僕の母は今日も黙々と息子のクワンチャイをバックアップするという使命を感じて仕事をしてくれています。僕の自慢の母。母は今も僕を小さな子供の様に思っているんでしょうか? もっと長生きしてもらってクワンチャイがブレイクする処を見せたいです。
その他の辛旨トーク
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