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辛旨トーク

顧客本位という言葉の陥穽

『顧客本位という言葉』を錦の御旗としてお客様のご意見を絶対として振りかざす短絡的な思考の人がたまにいます。確かに、お客様の素直なご意見に接する事は僕たちの成長の糧でもあります。しかしお客様の、時には身勝手な意見に振り回されすぎて本質を見失う愚は避けなければなりません。例えば、お客様の要望にすべて合わせ、お弁当の仲介販売会社の要望をすべて受け入れれば完全に採算割れしてしまいます。結果として継続的に事業を続ける事は出来なくなります。一番大事な事は、お客様の健康を慮る良心に従って美味しい料理を提供する事です。自分の心を偽り採算性のみを考えながら一見して美味しくて値段が手ごろな料理を出そうとすると、お肉だと薬品を使用して柔らかくして高級牛肉であるかのごとくする方法があります(殆どのお客様は気がつかれていないと思います)が多用すれば発癌性の危険性があります。お肉を血の滴る様なピンク色のミデイアムレアーでお弁当に入れれば肉の中心温度が60度を超える様に加熱していても、時間経過とともに食中毒のリスクが発生します。この危険を回避して美味しく見える状態で弁当などを提供するには亜硝酸等の防腐剤を塗布する必要があります。お客様は見栄えがして安価な料理を望まれますが、そのためには大量摂取で発癌性が発生するものが含まれているリスクを覚悟して頂かなければなりません。クワンチャイでは高級弁当の受注を受けていますが、良心に従って発癌性の危険性のある薬剤や防腐剤を一切使用していません。クワンチャイでは10年以上前から真空調理という技法を使い調理温度を抑え、お料理が固くならない様にしていますが、お弁当の場合には、お客様から『どうして肉が固いんだ?』とか『ウエルダンで焼かなくても良いじゃないか?』となるのでしょうが発癌性の薬品までを使ってお客様を欺くことは出来ません。飲食業を行う我々は『顧客本位という言葉』の陥穽にはまってはならないのです。何故なら我々はお客様よりも少しばかり料理に詳しいプロだからです。いい例があります。産直地鶏の居酒屋で急成長した塚田農場が従来はMR用の販売会社を経由して高級弁当を販売していたのですが、販売会社の手数料が高く、このままでは採算を考えると良質な商品を提供できないと判断して、従来よりも良い素材を使い原価率を引き上げて直接お客様にMR弁当を販売して大ヒットしています。本当に美味しいく健康的な料理を、お客様の立場に立って提供するにはお客様のご意見だけを鵜吞みにする目先の短絡的な顧客本位ではなく、料理人の良心に従った真の顧客本位になるべきだという参考事例なのではないでしょうか。

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